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蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

良い / 口コミ件数 : 48


価格 : 420 円





クチコミReview一覧
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1.  とても良い ライさん 書き込み日: 2006年01月29日

これは面白い

プロレタリア文学、というとまず出てくる作品だがなんだか取っつきにくい
感じがしてやっと最近手にしたが、こんなに生き生きとした面白い作品とは
思わなかった。船内の生々しい描写にも驚くが最後まで読ませる力を
この作品は持っている。資本家の労働者からの搾取という問題は今でも
解決されてはいないが、この作品が70年以上も命脈を保ち続けている
のはそのテーマ性よりも人間が描ききられているからではないだろう
か。同時収録の「党生活者」で敷衍される組織の問題にしても、まず
そこには人間がいる、ということを我々にまざまざと思い起こさせてく
れる。蟹甲船はプロレタリア文学というよりもまず文学として成功している。
これは作者にとっては本意なのであろうか・・。



2.  とても良い TAMADONさん 書き込み日: 2007年02月08日

食わず嫌いを後悔・・・ 「政党」じゃなくて「正統」な現代小説でした。

最初はプロレタリア文学として、その思想的背景が嫌であえて避けていた。
間違いだった。
少なくとも「蟹工船」は、共産主義やその周辺の思想的な記述はポツポツと出るだけ。
しかも見かけ上は過度の共産主義賛美な箇所は見当たらなかった。
作者の意図を度外視すれば、この小説の面白さはイデオロギー(団結、反権威など)とは別のところにあると思う。
現代に生きる我々としては、例えば多彩な人物の登場であるとか、セリフを多用した臨場感や、
濃密な空間を設定し、そこで起こる出来事や感情の動きを一つ一つ追う、といった
いわばオーソドックスな手法から、小説的面白さを汲み取ることができるのではないか。

そもそも「蟹工船」の設定は古臭いものなのか?
船内の狭い空間に何百人という漁夫たちが押し込められた描写は、満員電車でもみくちゃになった通勤風景を想起させ、
死ぬ寸前までの労働者の酷使は、過重な残業を思い起こす。
蟹工船の労働者と現代のサラリーマンとが、私のなかであまりにも重なり、
古さを全く感じなかった。
だからと言って、「サボ」を現代人にも薦めるつもりは全く無いけど。
我々の過酷な労働環境をどう改善すべきかは、また別の機会に考えるとして。
これを共産主義文学や革命文学というくくりで読もうとするから話がこじれるのであって、
純粋に多喜二の小説的技法を味わう、といったノリでいいんじゃないか。



3.  とても良い 進藤照光さん 書き込み日: 2008年05月31日

現在も繰り返す「蟹工船」の世界

 過去に何回か読もうと本書に挑戦したが、船上での暴力を伴う過酷で劣悪な労働条件の下で働く者の血と汗と、船内のリアルな描写による不潔で、悪臭がただよってきそうな気配に、読書欲がそがれて、挫折を繰り返した。

 本書の内容は、カムチャツカ沖で操業する蟹工船上を舞台に、貧しい出稼ぎ労働者たちが、常識を超える悪条件の下で労働を強いられる。かつその彼らに暴力を振るう現場監督の労務政策の耐え難い限界に抗して、なかば自然発生的なストライキに立ち上がる物語である。
  
 暴力的な労務政策は別として、今日の低賃金と無権利状態の派遣労働者・契約社員・名ばかり管理職・アルバイト社員などは「蟹工船」に近いか、類似した職場環境で働いていると思われる。

 長時間労働や成果主義が広がる中で過労死や過労自殺や使い捨てが後を絶たないのが現状であることが、それを物語っている。つまり、本質的には80年前の日本の資本主義と今日の資本主義の真髄は変わっていないといわざるをえない。

 本書は80年以上も前の古典だ。しかも用語解説も付されていないし、当て字も多く読みづらいと思うのだが、それでもこの古典を読み、いまの厳しい労働環境を変革しようとする若者が大勢いることは心強い限りだ。

 今回は彼らのエネルギーに勇気づけられて、私もやっと読み終えて、やはり長く読み継がれた名作だと実感した。



4.  とても良い pommier_pommeさん 書き込み日: 2008年08月06日

ぞっとするリアルさ

男くさい、匂いたつような小説だった。今にも蟹工船で働く男たちの、汗や匂いや、涙や血が、触れそうなほど近くに、浮かび上がるくらいに、精緻な描写だった。目を覆いたくなるような、残酷な労働搾取。本当にこんなことあったの?と耳を疑うほどのひどい仕打ち・・・労働の対価なんてあったもんじゃない。対価をもらうどころか命まで落とし、そこまでしておいて受けるのは心無い弔い。死んだ虫でも扱うように、物よりも粗末に扱われる命。お金のために何百と消える命。あまりのすごさに、目を血眼にして読んでしまった。止められない位、ぐいぐいと内容に惹きこまれた。
法律の適応されない世界で、繰り返される人権無視。これほどひどいものなのか。搾取する側とされる側は、天と地ほど離れているものなのか・・・。愕然とすることしばし。

この小説が売れている。近所の本屋では売り切れだった。
確かに、現代ではこれほどひどい労働条件は無いだろうけれど、非正規雇用者やひどい労働条件に置かれている人たちには水を吸うように理解される内容だと思う。そして大きな勇気を与えられる内容だと思う。単に小説として読んでも本当におもしろい。現実を抉り取ったノンフィクション風小説としては、本当に、ぞっとするほどのリアルさで、ぐいぐい読者を引っ張りこむ。すごく興味深い内容だった。
昔言葉だけれど、全く古くない。時代を超えて読みつがれるのもよく分かる。



5.  とても良い SEIGENさん 書き込み日: 2008年07月05日

あの時は想像もつかなかった・・・

かつて作者の小林多喜二氏が学んだキャンパス(=現在の小樽商科大学)で、奇しくも私はこの『蟹工船』を読んだことがある。読んだ当時、今のような状況をまったく想像できなかった。時代が一回りしたのだろうか?それとも、グローバリズムという「黒船」のせいか?いや、権力に抗い命を落としてまで守り抜こうとした作者の想いを、今日までほったらかしにしてきた我々自身にこそ、その最大の非があるのではないだろうか?もう一度読み返してみたいと思う。そして、もう一度、作者が命を懸けて訴え、そして守り続けた「信念」の正体に触れてみたいと思う。このレビューを読んで、不快に思われる人も多数いるかもしれない。しかし、あえて言いたい。十年前に読んだとき、今の日本の姿を想像することができなかった。あれだけプロレタリア文学を馬鹿にしてきた日本のサラリーマンたちが、組合活動を忌み嫌い「ダサイ」と断じてきた彼らが、よもやこの本を手にしようと思うことなど。



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