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人間の安全保障 (集英社新書)

人間の安全保障 (集英社新書)

とても良い / 口コミ件数 : 11


価格 : 714 円





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1.  とても良い 或る平和的市民さん 書き込み日: 2006年11月19日

理論付け

本書は、「人間の安全保障」という概念の理論付けがなされています。といって
も、専門書のようなものではなく、読みやすいですし、「人間の安全保障」につい
て深く理解できます。

【法学を学ぶ方へ】本書は、「人権」「民主主義」についての、一般の教科書には
ない説明がなされています。しかも、それはとても示唆に富む内容です。なので、
一般の方のみならず、専門として法学を学ぶ方に、是非お勧めしたいです。

つまるところ、本書の最も優れた点は、人間にとって大切なこととは何か、を教え
てくれることです。絶対的な答えではないですが、とても有意義な議論がなされて
います。

お勧めです。



2.  とても良い ビブリオンさん 書き込み日: 2006年01月19日

公共の論理から世界を見る

 カルカッタ大を卒業後、英国で経済学を学び98年度ノーベル経済学賞を受賞したインド出身の学者です。 2000年から2004年に書いた8つのエッセイをまとめたものです。「人間の安全保証」から「環境問題」まで主題は多様ですが流れは一つです。
 インド・中国・日本・アラビア・アフリカなども含めた現代及び過去の思想が、随所に引用されています。ヨーロッパ人の思想家よりも幅広い教養があります。インド(非ヨーロッパ)出身の根を生かして、世界全体を見ようとする真摯な眼差しがあるようです。

 「人間の安全保証」という言葉は、類似の「人権」などとの差異がはっきりしません。また世界規模で考えると、色々な見方が出来る難しい主題です。しかし著者の論理は明晰で、正面から問題を掴み、西洋の論理的思考に基づき公正に話しを進めていきます。翻訳の力も大きいと思いますが、我々には大変読みやすい内容です。

右側には自分たちが意識していない強引な西洋中心主義思考があります。左側には、貧困からの脱出を願うアジアアフリカの民衆を狙う狂信的宗教思考があります。この狭間で、世界の本質をその多様性と豊かさを含めて認識し、自由と論理的思考と友情で生きることの大事さを様々な主題毎に力説されています。

論理的な運びに特色があります。ある国ではAには不都合があるからいやだと言った場合、実はその国ではAを必要としないと言っているのではない。クレイムの中心は、Aの配分とか運用法が問題なのだが、そう表現できないのだという点です。自分の周りでも、こんなことは結構ある事に気づきました。意見を聞く時に、賛成か反対かだけに気を取られ、相手の状況を見て相手の本来言いたい意味を汲み取る余裕を持てません。後から自分の誤解だったことや、思いもかけず責められる事があります。ものの考え方と他者の理解の点で大変学ぶところがありました。



3.  とても良い 仮面ライターさん 書き込み日: 2006年01月29日

セン博士の意想が凝縮された本

 
 本書は、同じ集英社新書の『貧困の克服―アジア発展の鍵は何か』(2002年1月)に引き続くアマルティア・セン博士の小論集で、「人間の安全保障と基礎教育」など8本の論稿が収められている。本書も是非、高校生や大学生の皆さんに読んでもらいたいと思う。

 さて、本書のテーマである〈人間の安全保障〉の簡潔な定義だが、それは「人間の『生存』と『生活』を守り、維持するものであり、また、私たちの人生に危害や侮辱、軽蔑を与え得る様々な苦難を回避すること」(本文)とされている。そして、〈人間の安全保障〉は、「人間の生活を脅かす様々な不安を減らし、可能であればそれらを排除し、人間の生活に制限や制約を加えたり、その開花を妨げたりする様々な障害物を取り除くこと」(同)を目的としている。

 ここで特筆すべきは、前掲書や本書で触れられている「アジアの明日を創る知的対話」(1998年)における故小渕恵三首相の基調演説で、そこで故小渕首相は、アジアにおける〈人間の安全保障〉の取組みを訴えたことである。この取組みは今日までささやかに行われているらしいが(国連に「人間の安全保障基金」を設置)、私は〈人間の安全保障〉政策を与野党を問わず、日本外交の基軸と据えるべきではないかと考思する。少なくともそれは、我が国のODA(政府開発援助)が、例えば隣の大国における軍備増強(漢人の安全保障?)に貢献している状況に比べ、アジア(そしてその他の地域)の大多数の民衆から大いに歓迎される政策であることは間違いあるまい。

 最後に、セン博士の“グローバル化(globalisation or globalism)”についての捉え方であるけれども、セン博士は、S.ハンチントン(Samuel P.Huntington)教授の「文明の衝突」論に対抗する意味でその語を使用している。説明は省略するが、私はむしろ、“世界化”とした方が含意が通じやすいと考えている。



4.  とても良い 高原梢さん 書き込み日: 2007年05月16日

知性の深み、道徳哲学の復権

 ひとことで言えば、素晴らしい本です。もちろん、細部を読み込んで、批判をすることはいくらでも可能でしょう。賞賛するにも批判するにも、しがいのあるものだという意味で、素晴らしいと言いたいと思います。
 経済学を越えてさまざまな分野に影響を及ぼしているセンですが、個人的には道徳哲学・倫理学的なグランドセオリーの復権という観点から、評価したい。「人権を定義づける理論」の章は、圧巻です。とりわけ、ドグマチックな理想主義として敬遠されがちなカントの義務論が、人権の基礎づけにおいて、「理論と実践」の両方にわたって果しうる役割の可能性を、きちんと評価し、扱っています。実はこれ、カントの専門家でもできていない人が少なくないのです。倫理は法が機能するための広い土壌を形成するものである、という実りあるセンの議論を、近代法の法と倫理の峻別に固執している方々には、ぜひお読みいただきたい。
 知識量の多さと目配りの広さは確かにすごいですが、学の本質は、その多さと広さを言い立てることではなく、どれほどの深さで対象を熟考し、吟味し、批判的に検討する思考の作業ができるかだと思います。その意味ではセンには、感嘆のため息しかないのですが、遠く及ばなくとも、その姿勢に学びたいものです。



5.  とても良い 伊藤 窿さん 書き込み日: 2007年05月06日

これぞ知識の源泉 世界が待ち望んでいた知識人が彼です。

 アマルティア・セン、彼はインドが生んだアジア初のノーベル経済学受賞者です。最近高校の「現代社会」や「倫理」の教科書にも彼の名前およびその思想が記載されるようになってきました。インドがここの所絶大な経済発展を成し遂げていることは有名ですが、近い将来それを象徴する世界史上の人物として評価されるはずです。日本でも川本隆史を中心として熱心な紹介がなされ、「現代を代表する知識人」として定着しつつあります。
 本書は各方面で出された小論を集めたものですが、我々がセンに望んでいる論考がまとまっていて値ある一冊になっています。特に「グローバル化」について述べた2つの章が抜群です。西洋中心主義的な狭量の歴史観をやすやすと、しかも高校の世界史でも習うような容易な実例を用いて打破します。そしてその視野の広さ。西洋と東洋の「知の大系」を十二分に理解した上で展開される、まさにグローバルな思考。彼は新しいタイプの、そして世界が望んでいた知識人なのです。
訳も素晴らしい。知人が代表作『自由と経済開発』(日経新聞社刊行)の訳のダメさを批判していましたが、実際訳出技術の拙劣さのために台無しになったり真価が曇ってしまった学術書の何と多いことか(これは映画の字幕にも言えることですが)。しかし本書は見事でかつ読みやすく、その意味でも多くの人に薦められる一冊です。「人間の安全保障」の第一は読み書き計算の基礎教育にあるとセンも主張しています。我々はすでにその潜在能力(ケイパビリティ)を得ています。ではそれを発揮して、これだけの好著ですから是非読んでみてください。
〈追伸〉平成18年度政経センター試験の大問1問目にこの「人間の安全保障」という概念が大々的に取り上げられました。このリード文は抽象論的・概括的ではありますが極めて良くまとまっています。本書を読む前にさらに手っ取り早く、という方にはお勧めです。



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