とても良い / 口コミ件数 : 15件
価格 : 1,680 円
インテリジェンスについて、基本的な説明を加えながら、実例を元に結論を導き出すと言う方法を取っております。 著者も後書きで、資料が少なくて思うように仕事が進まないとぼやいて、先輩に叱られるエピソードがありましたが、本書では、英米の外交暗号の入手や、ソ連における地道な情報収集活動、情報担当将校の立場など、それまでなかなか知ることができない事を知ることができ、著者の本作への力の入れようには脱帽します。 この時代に興味がある人や、情報活動に関心がある方は是非読んでおいても良い本と言えるでしょう。
タイトル通り、本書は日本軍のインテリジェンスについて、これまで知られていなかった日本軍の情報活動について詳細に調べ上げ、その問題点を指摘していますが、本書で一番読み応えがあるのは最後の章でしょう。筆者は、現在の日本のインテリジェンスの本質が戦前とほとんど変わっていないことを指摘し、その本質を変えない限り、現在の日本のインテリジェンスが絶望的であることを述べています。読みやすく、明快な内容でした。
昨今の自衛隊の情報流出や上海領事館員の自殺事件など、日本でもインテリジェンスに関する議論が高まっているが、これらの問題は防諜体制を確立し、対外情報部を作れば解決するというほど単純なものではない。筆者は戦前の日本には対外情報、防諜組織が整っていながら、それらが機能しなかった事例を見事に描き出しているのである。戦前日本のインテリジェンスに関しては、日本が米英などの暗号通信を解読していた事実など、初耳の事も多く興味深いが、やはり本書の白眉は7章と終章、戦前の事例から日本のインテリジェンスの本質を抽出し、それが今も変わらないままであることを指摘していることではないだろうか。本書を読めば、現在の日本のインテリジェンスの抱えている問題が、非常に深刻であることが伝わってくる。
第16回山本七平賞奨励賞受賞の名著。『イギリスの情報外交』に次ぐ、著者のインテリジェンス研究書第二弾である。前著と同じくインフォメーションとインテリジェンスをしっかりと区別しつつ「政策サイドから情報サイドへの情報要求(リクワイアメント)の伝達によってインテリジェンスが生産される」というインテリジェンス・サイクルを念頭において書かれているために、単なる歴史書と異なり、日本軍が抱え込んだインテリジェンスの問題点を「暗号が解読された」という単純なレベルを遙かに超えて深くえぐり出し、貴重な今日的教訓を提示することに成功している。今日の我が国では、日本版NSC創設と合同情報会議の強化等がさかんに議論されているが、これもサイクルの回転という観点から捉えないと、単なる組織いじりに終わってしまうだろう。インテリジェンスの研究者のみならず、改革に携わる実務家にとっても必読。今後の我が国のインテリジェンス史研究の在り方を指し示すような作品に仕上がっている。
現代的視点から日本軍の情報調査分析能力を冷静に評価した。日本軍の個々の情報工作や関係者の伝記は山ほど残されているが、インテリジェンス活動を総括し現代的評価を下した本はいまだない。全体として「情報軽視」が敗戦の一因になったという捕らえられ方が一般的になっている。著者はここで、陸軍に関しては世界最高クラスのソ連と情報戦をして、それなりの成果を挙げ、米英に関しては、最高度の暗号解読にも成功し、国民党に関しては暗号解読し放題で、戦果を次々挙げたとしている。一方だめだったのは海軍で、暗号は米英にだだ漏れ状態。米軍艦への戦果調査もずさんで、天皇に「今度でサラトガの撃沈は4度目ではないか」とたしなめられている。 本書が面白くたらしめているのは、日本軍のインテリジェンス活動を初めて現代的視点から振り返っただけではない。1次資料から起こしたソ連との緊迫した情報のやり取りを読んでいるととこちらも胸かき立てられるものがある、。お互い全体主義で、自由に国内を歩くことなど夢のまた夢。厳重な防諜網をかいくぐり、資料を入手したり、まさに命を張っていた。 日本の敗戦は結局、都合のいい生情報を選んだために緒戦はうまくいったが、結局負けてしまったということらしい。著者は現代日本への教訓として情報部の地位の向上などを挙げている。結語もここまで一連の文を読んでくると、非常に納得のいくものだと思う。