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対称性人類学 カイエ・ソバージュ (講談社選書メチエ)

対称性人類学 カイエ・ソバージュ (講談社選書メチエ)

とても良い / 口コミ件数 : 15


価格 : 1,785 円





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1.  とても良い ib_pataさん 書き込み日: 2004年02月21日

中沢版「最後の仏教」の始まりの終わり

 2年半かけて一応の完結をみた『カイエ・ソバージュ』全5巻において、中沢さんは一貫して「現生人類の知的能力は三万数千年前におこったと考えられる、大脳組織の飛躍的な変化以来、本質的な変化も進化もとげていない、という現代の認知考古学の見解を支持する立場に立ってきました」(p.24)と述べています。その進化とは「ニューロンの接合様式の革命的な組み換えによって、それぞれの領域で特化して発達していた認知領域を横断的につないでいく通路が形成され、そこで流動的な知性が運動を開始した」(pp.74-75)ことです。そして、現生人類こそが無意識をもって地上に出現したヒトであり、心の本質をかたち作っているものが無意識なのだ、というのが5巻目の主題となります。

 以前、中井久夫さんの『清陰星雨』(2002、みすず書房)を読んでいたら、新約聖書のパウロの手紙で面白い解釈が紹介されていて、それによると英語のconscienceをはじめ、フランス語、イタリア語、スペイン語は「良心」と「意識」が同じ言葉だそうです。西欧の精神医学は「無意識」という概念を認めるのに反発を覚え、無意識に行動が左右されるということは耐えられなかったのかもしれないと、中井さんは書いているのですが、中沢さんは「仏教のような思想伝統では、それは『無意識=意識がないもの』とは言わずに、いつさいの心的現象の基体をなか『心そのもの=心性』なのです」(p.77)として、仏教の可能性を追求していきます。

 現代の思想に神話的思考が敗れ去ったいま、残されているのは「言語的な知性が発生するのに必要な『原初的抑圧』のシーンを、ことさら古代に取り上げて強調する宗教とは異なって、むしろこの『原初的抑圧』の向こう側に広がる、流動的知性の働きの中に踏み込んで、その働きを開花させて、ふつうの論理で動いている世界にその働きを持ち込んで、世界を変えようとする思想である」(p.178)とまで宣言するのです。p.148-151に記されたネパールで経験したチベット仏教の修行で経験し、殺される山羊を自分の母親であると観想し、山羊との同質性を感じて激しい感動におそわれたというシーンは、もしかして、この本のクライマックスなのかもしれない。しかし、中沢さんは仏教は宗教などではなく、思想である、とするのです。

 これから、中沢さんの「最後の仏教」の探求が始まるのかな、と楽しみにはなってきます。



2.  とても良い バンボラさん 書き込み日: 2004年06月14日

刺激的!です

ふむむ・・・。日常におぼれ、不幸ではないが幸福とも言い切れない毎日を、仕事上の責任感と、家庭人としての役割に追い立てられ、颯爽と生きてる風を装い、実は青息吐息。そんな一人の女としてはすご−−く刺激的でわくわく読めました。そうか、私は対称性に傾いている人間かも。無意識に同質なものをかぎ取ろうと生きている・・・。一瞬にしてマクロからミクロを縦横に駆けめぐる自身の心のありよう、抽象、求心的行動まで納得してしまった。挿入された神話も詩のようで。実に実にわたしは、おもしろかった。知的刺激と自分自身の探求を渇望している方に、おすすめします。これ読んで、涙がこぼれたのは私だけかなぁ・・・。



3.  とても良い さん 書き込み日: 2004年04月20日

おもしろかった。

完結してしまうと、もうあの講義が読めないのかと残念です。あいかわらずの中沢ぶしがとても興味深い。ある意味、仏教の思想性や解釈の仕方などなど、彼の主張にはいつもある意味ケレン味とペテンに満ちており、ファンタジーを感じさせます。それは、ある意味誤解を生む怖いものであると同時に豊かで詩的にも感じます。思想は、博物館にコレクションされた化石ではなく、生きて人を先導(扇動?)しなければならないので、そういう意味ではとても広告的な人だ。チベット仏教のようなマイナーかつ精神世界追う静謐な思想を追及している割には、根本がエンターテイナーであり煽情家なんですよね(笑)。
彼の「こたえ」まで踏み込む姿勢は、危いと感じると同時に、いつも心底ワクワクさせられます。



4.  とても良い アジアの息吹さん 書き込み日: 2004年08月06日

対称性無意識の働き

読み易いということが、必ずしも内容の薄いことを意味しない名著
カイエ・ソバージュ(野放図な思考の散策)シリーズ最終第五巻。
本書ではシリーズ全五巻のまとめとして、私たちの心の基体である
無意識(=対称性無意識)と、その論理が切り開く未来について語られてゆく。

私たちの「心」は数万年前、現生人類の脳組織に起こった

変化以降、本質的な変化はしていないのだという。
その時、様々な知性領域を横断する「流動的知性」が発生した。
それはフロイトの言う「無意識(=対称性無意識)」と一致している。

その無意識は、アリストテレス的論理と違う幾つかの特徴をもつ。
それは?過去/未来という時間系列を知らず、

?自己/他者の分離が行われず、?部分と全体が一致している。
この一見私たちの普通に考える「知」のあり方から外れた思考様式は
しかし「心」の本質であり、その働きを無視して
人類の未来も幸福もないのだ、と筆者は言いたい様に思える。

よって無意識の抑圧を謀る現代社会に私たち人類の幸福はなく
心の働きを産み出している対称性無意識の働きによって
一神教によって作られた形而上学化された世界を
「自然化」することが肝要なのだという。
それを具体的な行動にどう移していくのか定かではないが、
通して読み終わった後、爽やかな知的昂奮に満たされることは間違いない。



5.  とても良い ソコツさん 書き込み日: 2004年09月13日

非対称な毎日だから

元気のでる本だ。本書のもとになった講義が行われた中央大学の学生がうらやましい、と無味乾燥な授業が当り前の大学に通う人間としては思う。世間の日々の「つまった」感じに漠然とした不満をおぼえている時、こういう前向きで開放的な思想を山のような知識の裏づけのもとに熱く語ってもらえると、とりあえず「勉強」でもしてみようかなあ、という気分になる。

でもまあ、これは「夢」なんだ、とこの本を読んでいる途中で何度も思った。中沢氏の語りのスピードにのっていられるうちはいいのだけれど、ふと立ち止まってみてゆっくりとページの上に並んでいる言葉の群をながめていると、なんとも無茶な話をする人だ、と傲慢な読者になってしまう。かつて小谷野敦氏が中沢氏の著作をして「すべてインチキ」と罵倒したが(『バカのための読書術』)、それを思い出した。まあ、個々の知識については正確にわかりやすく解説しているはずなので、「インチキ」は言いすぎである。しかし世界の思想や宗教のうち著者の生理にあったものを選びだし、それらを「対称性」の器のなかに盛っていく手つきを遠くからみていると、ああ、これは夢なんだ、と思うのである。



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