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これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないか。女性の描写力の凄さにも、脱帽! |
この「ガール」は、本当に面白かった。私は、これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないかとまで思っているくらいなのである。この短編集では、社会の第一線で働くさまざまな女性たちの心の内が、実に生々しく描写されているだけでなく、「ヒロくん」、「ガール」、「ひと回り」を始めとした一話一話が、物語としても非常によくできているので、女性はもちろん、我々男性が読んでも、面白過ぎるくらい面白いのだ。
この「ガール」には、それぞれの立場で、仕事で、あるいは、女として、人生の岐路に立たされた5人の30代の女性の物語が綴られている。
「ヒロくん」では、課長に抜擢された女子総合職が、男のメンツをかけて反抗的な態度で歯向かってくる年上の係長と壮絶なバトルを演じ、「ワーキングマザー」では、子育ても山を越え、仕事にやりがいがほしくなり、閑職から古巣に復帰したシングルマザーが、周囲の過剰な気遣いにため息をつく。
未婚の3女性は、「マンション」購入の決意をすることによって、色々な現実と向き合うことになって思い悩み、あるショックな出来事を契機に、「ガール」でいることの潮時を感じてブルーになり、ある日突然、自分の目の前に現れた「ひと回り」も歳の離れたハンサムな新人に、心が千々に乱れるのだ。
それにしても、特筆すべきは、奥田英朗の女性の描写力の凄さだ。特に、登場人物の女性たちの心の奥底までもを覗いてきたかのような、微に入り、細にわたった心理描写は、たとえ、綿密な取材を行っていたとしても、取材に応じた女性たちが、ここまで素のままの自分の姿を男性にさらけ出すだろうかと思えるほどのレベルにまで達しているのだ。同じ男性として、作者の女性に対する観察力の並外れた鋭さと細かさには、素直に脱帽するしかない。ここまで描写されたら、女性たちも、自分たちの心の内まで見透かされているようで、こわいのではないだろうか。
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