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潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る

とても良い / 口コミ件数 : 9


価格 : 1,680 円





クチコミReview一覧
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口コミ件数:9 1 2 次ページ
1.  とても良い ひろりんさん 書き込み日: 2007年05月06日

閉じ込め

71歳という年齢としては、極めて元気だった親父が、脳梗塞で突然倒れた。一緒に八ヶ岳に登った、わずか数ヶ月後のことでした。

「脳幹」の「橋(きょう)」の神経細胞が、脳梗塞により死んだ。生命の危機を脱した親父の状態が、この本の著者(?)と同じ。

Locked in syndrome。「閉じ込め症候群」だそうです。
知覚と思考は正常なのに、体は全く動きません。

医師の説明で、理屈では理解していた状況を、この本がリアルに理解させてくれました。

眼球と瞼しか動かせない人が、この本を書いたプロセスが、心の深い所にズシンと来ます。親父のために、同じ事をしてあげなければ、と思う。



2.  とても良い 読書家志望さん 書き込み日: 2008年03月26日

もし心だけになってしまったら…

 「もし人が、すべてを失い、〈心〉だけの存在になったとしたら、世界は、そして人生は、どのように見えるのだろうか」
とは本書の訳者のことばだ。その問いに偶然答えることになったのが本書だ。

 映画の中にもそれを象徴する場面がある。ジャンドクがまさに昏睡から目覚めた直後のワンシーンだ。おぼろげな意識からやがて覚めてくるジャンドクだが、医師の質問に答えている「はず」なのに、なぜか通じていない。なかなか自分の置かれている状況が飲み込めず、医師の説明によってしだいに明らかにされていく病状から、ジャンドクは落ち着きを失い次第に呼吸が荒くなる。「誰にも通じない」そんな患者の絶望感、孤立感が伝わってくるようだ。

 ジャンドクは確かにことばを失ってしまった。しかし、ジャンドクらしい感性や記憶、想像力までは失われなかった。そうした内なる想いを引き出すのに成功したのが瞬きコミュニケーションだ。以下は彼のことばだ。
「楽しみのためには、匂いや味についての、鮮烈な記憶をよみがえらせてみる。それは決して汲み尽くしてしまうことのない、人間の感覚の貯水池だ。残り物をうまく料理するコツがあるように、僕は今、思い出をじっくり煮込むコツに、磨きをかけている」
「生きている限り、呼吸をする必要があるのと同じように、僕は、感動し、愛し、感嘆したい」

 こうした代替的なコミュニケーションを可能にした言語療法士を、彼は<守護天使>と呼び、こう言っている。
「言語療法は、もっと広く知られるべきものだと思う。舌というものが、ことばの持つあらゆる音を出すために、いかにさまざまな運動を無意識のうちに行っているか、まったく驚かされるばかりだ」

 普段私たちは意識していないが、一言を発することさえ奇跡なのだということを、本書によって改めて思い知らされた。一瞬一瞬の奇跡に感謝しつつ、ことばをうまく使えない人を理解したい。



3.  とても良い 蝶子さん 書き込み日: 2008年02月16日

胸が痛くなります

文章は美しく流れ、ウイットに富んでおり、万物への溢れる愛情を感じます。
泣いた、絶望した、という素直な文章が至る所に
ありますが、それを書くという事に至るまでに、この方が
どれだけの苦しみの中にいたんだろうかと思いを馳せると
胸がしめつけられます。
人生の殆どの事をあきらめ、生きる。生きてる意味って・・・?
考え方で、人間はここまで強くなれるんだ、と知りました。
あと、愛情って、偉大だなぁ、と。
与えられるということと、与えるということ。どちらも。



4.  とても良い パタさん 書き込み日: 2008年01月24日

すばらしい生の賛歌

最も人生の中で充実していて、愛しているものに囲まれていて、そして社会的にも
成功していた彼はいつもの生活の中で、ある日突然の身体の不幸におそわれる。
次に目覚めたときには自分が「潜水服」の中に閉じ込められていた。

自分の身体や運命を彼はきっと呪ったことだと思います。
最初はいずれ回復するだろうと信じ、あるときそれは絶対にやってこないことだと
気付かされます。

でも、この本には恨めしさや生きることの絶望は全く出てきません。
彼は、閉じ込められた潜水服の中でも、人生を愛し、家族を愛し、身体が全く
動かなくなった今でも大切な思い出や五感で感じていた記憶でいろいろな旅を
していきます。
また、病院の中の出来事や家族や友人を愛を込めて表現しています。

彼が潜水服から抜け出る術は蝶と例えられているその言葉にありました。

人生を愛すること。
愛している人たちを愛して大切にしていくこと。
どんなことになっても生きる喜びを感じること。
身体が動かないことで、彼はすばらしい精神世界に生きていくことを
手にいれました。

すばらしい。
あらためて生きる喜びについて感じさせてもらえる。そんな感じです。



5.  とても良い MMさん 書き込み日: 2008年03月01日

魂が刻むひとつひとつの言葉の重さに絶句。生きるとは何なのか?

43才で脳幹出血を発症し、心は全く正常のまま、左目以外のすべてを動かすことができなくなった、雑誌ELLEの編集長によるエッセイ集を邦訳した書。エッセイは病気発症後、左眼瞼の動きによってアルファベットを指定して綴った言葉による。

まず、数時間あれば誰もが読破可能な量のエッセイであるが、12月から翌年の8月までの間に、途方もない苦痛を振り払わなければ不可能な作業によって創られた作品であることに驚かされる。著者の苦痛は、潜水服に閉じこめられて海に沈められたかのようだと表現しているようだと述べており、これが表題となっている。たとえ閉じこめられても、蝶のように自由に舞うことを夢見て、希望を捨てずに最期まで生き抜いた人間の記録である。特に、著者は富の象徴であるファッション界の頂点から、まばたき以外なにもできない境遇に陥ってしまったにもかかわらず、精神的に異常をきたさないどころか、ユーモアあふれる、かつ詩のような美しい文章を遺した。エッセイには日々の不満や過去の出来事が述べられているが、家族への想いや未来への希望が彼を支えたことが伝わってくる。また、彼のメッセージを通訳した言語治療士や古い同僚によって与えられた生きる希望についても見逃せない。本書から、周囲の献身的な協力と、人の心の強さによって、生きる意味とは、希望とは何なのかという鮮烈なメッセージが読み取れる。ひとつひとつの言葉が刻まれる重さは、書を読んでいる間中途切れることはない。

著者は発病から1年4ヶ月、本書の出版された数日後に死亡した。本書をもとにして制作された映画も観たが、それゆえにこのエッセイの重みが響いた。星5つの評価は映画を観た上でのもの。



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