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魂が刻むひとつひとつの言葉の重さに絶句。生きるとは何なのか? |
43才で脳幹出血を発症し、心は全く正常のまま、左目以外のすべてを動かすことができなくなった、雑誌ELLEの編集長によるエッセイ集を邦訳した書。エッセイは病気発症後、左眼瞼の動きによってアルファベットを指定して綴った言葉による。
まず、数時間あれば誰もが読破可能な量のエッセイであるが、12月から翌年の8月までの間に、途方もない苦痛を振り払わなければ不可能な作業によって創られた作品であることに驚かされる。著者の苦痛は、潜水服に閉じこめられて海に沈められたかのようだと表現しているようだと述べており、これが表題となっている。たとえ閉じこめられても、蝶のように自由に舞うことを夢見て、希望を捨てずに最期まで生き抜いた人間の記録である。特に、著者は富の象徴であるファッション界の頂点から、まばたき以外なにもできない境遇に陥ってしまったにもかかわらず、精神的に異常をきたさないどころか、ユーモアあふれる、かつ詩のような美しい文章を遺した。エッセイには日々の不満や過去の出来事が述べられているが、家族への想いや未来への希望が彼を支えたことが伝わってくる。また、彼のメッセージを通訳した言語治療士や古い同僚によって与えられた生きる希望についても見逃せない。本書から、周囲の献身的な協力と、人の心の強さによって、生きる意味とは、希望とは何なのかという鮮烈なメッセージが読み取れる。ひとつひとつの言葉が刻まれる重さは、書を読んでいる間中途切れることはない。
著者は発病から1年4ヶ月、本書の出版された数日後に死亡した。本書をもとにして制作された映画も観たが、それゆえにこのエッセイの重みが響いた。星5つの評価は映画を観た上でのもの。 |
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