良い / 口コミ件数 : 5件
価格 : 1,365 円
ジェンダー論について、深く啓蒙する書であるとともに、 普段、何気なくあるいは無意識に前提してしまっていて、 その矛盾に気づかずに加担してしまっている物事に対して 強く目を開かせてくれる。 そんな本当の意味で使える1冊であるとともに、世界の物事について 応用範囲の広い書物ともいえよう。 ただし、著者は「考えるプロセス」「思考すること」の重要性を 説いてやまない。悪しき実用主義を有害とさえ述べている。 「わかる」とは「分ける」ことに過ぎず、それはジェンダー論の俗流理解そのものの現状にも通じる。 そして、半可通な利用は確信犯的な悪用をも含めて、偏見の助長、無知蒙昧の蔓延、一層の環境悪化に帰結する。 安易に分けることでもって理解した(わかる)とする傲慢さは、怠惰や心の弱さにもその原因をもつ。 これこそ端的に差別そのものである。そこで起ること、それはすなわち「俗情との結託」と呼ばれるものだ。 世間の大半の書物が、書物本来のもつべき「自ら考える」ことを結果的に放棄せよと連呼しているような なかで、本書のスタンスは希有のものだ。 上野千鶴子が推薦しているかどうかにかかわらず、本年のベストブックの1冊となろうことは疑い得ない。
社会学者が現在、「ジェンダー」をどうとらえているのか興味深い本。 上野氏の帯書が面白くて、つい読んでしまいました。 最近よく見られるのが「ジェンダーには、実は4つの意味があるんです」という説明。 混迷を続ける日本の「ジェンダー概念」を整理するには、それしかないと私も思います。 初出がどこになるのか確認中ですが、著者もこの説明を採用しています。 しかし、「4つのどれにも社会的性の意味がある」というところで どうしても引っかかってしまう。 社会学者の立場ならそう考えてしまうのも良く分かります。 でも、ロングマン英英辞典でgenderを引くと male(産まない性)かfemale(産む性)かの事だと書いてある。 2007年に刊行されたロングマン英和辞典には、 文法的性と生得的性の2つの意味しか出ていません。 それに、「社会的文化的につくられた」なんて解釈、英英辞典で見たこと無い。 医学の分野で「gender difference in treatment(治療上の性による違い)」 という使い方をしますが、これは投薬上、「子宮のあるなし」等が問題になるから100%生物学的性の意味。 実際のところ英文のgenderは「(生物学的な)性」として読むと 案外、綺麗に意味が通ることがほとんどだったりする。 英英辞典に限らず、日本のジーニアス英和辞典にも「古・(生物学的)性」とある。 僕はいつも辞書や現実の用法と、社会学者の見解の差に立ち尽くしてしまう。 「ブレンダと呼ばれた少年」の書籍の話は面白かった。 この書の著者は、この出版社が偏っているならば、日本での出版を差し止めたいと言っているとか。 しかし、現時点で出版は止まっていない。 どうもインタビューで「この書の出版社が南京大虐殺の事実を否定していますが?」 といった変な形で前置きされて、この書の筆者に出版社の立場を変に誤解させたのが真相のようだ。 (「ブレンダ」の筆者は歴史の専門家ではないから、さぞビックリしたことでしょう) ・・「ジェンダー」関連の(ツールとしての)用語は、調べれば調べるほど、本当に本当に面白く、夢中になってしまう。 とにかく、手元に置いて、何度も読み返したくなる興味深い本でした。
ジェンダー論の考え方を比較的平易に、それでいてかなり深いところまで解説した良書であることは認めます。生物学的な性差論にもきちんと応答してジェンダー論の立場を打ち出していること、一応いわゆる「バックラッシュ」派の主張にも耳を傾け、相応に吟味したうえで反論していること(相変わらず独善性はつきまとうが)、「男は…」「女は…」という一般化の問題点をよく示していることは評価できるでしょう。「差別は個を単なる例にしてしまう」「男である個と女である個の平等」などの論点は特に示唆的です。 けれども同時にいろいろと問題も見てとれる本です。 ジェンダーを「規範」として問題化したのはいい。けれども規範を一義的に悪しきもの、認識を歪めるもの、抑圧的なものとする発想はいただけません。そもそも規範というのは社会を成り立たせるうえでも、個々人の自己形成のうえでも欠くべからざるものなのは自明の理です。それを認めたうえで、それでは規範が抑圧的なものに転化するのはどのような場面かを考察する、という論の運びにしなければ、一面的というそしりは免れない。 そしてジェンダーの見地について、男性にも理解者を広げていこうという発想が、基本的に欠けています。「男もまた差別されている」という主張は誤りだと批判しておきながら(「映画館の女性割引」と「男女の賃金格差」を比べる論法にはまるで説得力が無い)、そのわずか10頁先で「差別だとして告発された以上、それは差別なのだ」という坂本佳鶴子氏の言説を肯定的に引用しているのはほとんど失笑ものです。 総じて言えば、「男性支配」「男社会」というのは経験的な現実社会の認識から出たものというより手持ちの(フェミニズム)理論からアプリオリに演繹しただけの見解であって、そういう仮定を置かなくても、現実の性役割の抑圧性・性差別の問題には取り組めるはずです。 性別分業型の結婚が今や男性にとって不利なものになりつつあるような事情を考えると、ジェンダーの考え方は男性にとっても本来非常に有意義なものになりえます。けれども本書は結局「ジェンダー論=女性のもの」という先入見を強化する役目しか果たさない。著者が男性だから、なおさらその限界が目につきます。そもそも別の本の中で「どうして男の問題を論じないのか」と受講者の女子学生から突っ込まれ、そのときになって初めて驚いた、と書いているぐらいの人。帯にある上野千鶴子氏の賛辞など、この意味でも褒め殺しにしかなりません。 この点ともかかわることとして、説得術に関してはかなり稚拙。純粋に論理だけでなら、ジェンダー論の正しさなどいくらでも示せるはずです。だが本当に難しいのは、「男と女は違う」という日常的な実感に根ざした性別分業論を、どうやって現実に乗り越えるか、ということです。理論的見地から語るだけでは決して果たせるものではなく、戦略が要る。本書はそうした問題意識に欠けています。これではせいぜい「議論に勝って勝負に負ける」で終わるでしょう。
伊田広行さんのネット文献でこの書が紹介され批判されていたので、どんなものだろうと興味をひかれ読んでみました。 どちらかといえば、ある程度ジェンダー論に精通した人に新たな観点を提供する書と思えます。もちろん今の時勢を正しく把握していることを前提にすれば入門書としても読めます。 性役割を説明するのに、ニクラス・ルーマンの「規範的予期」と「認知的予期」の概念を導入して説明しているのは、なかなかよいアイデアだと思いました。バックラッシュ勢力からの批判の誤謬を、新たな観点から指摘しているのもおもしろいです。 ただ全般に、ジェンダーバイアスで得をするのは概ね男性であるなど、人生経験の乏しい学者の著すものはこの程度かといううらみも残りました。伊田さんを読んだ後だったからかもしれません。
入門書とあったので迷わずこの本を購入してみました。 しかし実際読み進めていますと、すごく偏りのある記述が多いと感じざるを得ませんでした。(勿論私は反フェミ等ではないです。今回この本はレポート用に買いました。)もっと中立的な立場からジェンダー論を説いていくような本を期待したのですが、正直読んでいて不快になるような書き方も少なからずありました。 肝心な内容ですが、ジェンダー論の基本的な概念を知る分には十分でした。(恐らくこういったところが入門ということなんでしょう) けれども個人的に期待したようなものとかけ離れていたのでこの評価ですね。知らないと恥かしいと言えるほど常識的に説いた内容とも思えませんでした。