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鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

とても良い / 口コミ件数 : 21


価格 : 1,050 円





クチコミReview一覧
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1.  とても良い アメセルさん 書き込み日: 2003年10月23日

夢十夜みたいなもの

30の物語は、バッハのゴルドベルク変奏曲を連想させる。その場合、最初の物語と最後の物語はアリアと見るべきか。

「モモ」の世界を想像して、あるいは鏡という言葉から「鏡の国のアリス」を想像して読むと、ずっこける。
とりとめのない不思議な世界のオムニバスという点では、漱石の「夢十夜」に近いと言える。

あるいは、ビートルズのホワイトアルバムの「レボリューション9」とか、エリオット・カーターの弦楽四重奏曲を聴いている気分になる、と言ってもよい。

ユング的な、夢の光景のような描写が続き、しかも、あまり楽しげな印象はなく、どちらかといえばうなされるような、解決感のない夢である。一体全体、エンデはこんな作品を書いて楽しかったのか、と最初は考え込んでしまう。

この!本は、一見サンにやさしくはない。

最初に「なあんだ、陰気な本だナ」と思われても仕方がない部分はあるが、先入観も何もなく、感覚だけ働かせて読んでいくと、実はいろいろな色彩、エネルギーに満ちている。
その至福の瞬間が自分に訪れるまで我慢できるか、が勝負である。何年かかけて、じっくりと読み込んでいくようなつもりで。

感性の豊かな人にとっては、たまらなく魅力的な1冊となるであろう。
同時に、好き嫌いが相当はっきり分かれそうでもある。この本にどうしても馴染めなくても、それも1つの見識だろう。

「モモ」が、交通標識的な教訓をもたらすとすれば、「鏡の中の鏡」は、理屈ではない、夜の闇にドキドキするような生命的な感覚を呼び覚ましてくれる。その意味で、本当のファンタジー!だ。人間がもっと感覚的な存在であることを、自覚させてくれる。だから、あえて意図的に物語の論理性を崩壊させているようにも感じる。

なお、できることならドイツ語でも味わってみたい。エンデの言葉遣いはやや独特な印象を受けるが、「鏡の中の鏡」は、ドイツ散文詩として読んでも十分に楽しい。



2.  とても良い ニセ猫さん 書き込み日: 2004年01月31日

鏡の奥

30の物語が連想でつながって1つの大きな迷宮を作り出している。絵からのインスピレーションに基づくが、根底にはエンデの哲学が配置されている。

1つの言葉で語れるようなものではないが、あえて挙げてみると「待つ」ということかもしれない。カフカの主人公のように待たされる。
何を、

試験を、出番を、教師を、救いを、裁きを、破滅を、終わりを、帰還を、運命を
古い屋敷に響く柱時計の音のように、物語のなかに「待つ」ことが刻まれてゆく。そして、断ち切られる。



3.  とても良い ayumさん 書き込み日: 2002年09月08日

孤立し、つながる意識の迷宮

『モモ』や『果てしない物語』などのファンタジー作品で有名な作者が、これまでの作品よりさらに一歩進んだものを書こうと取り組んだ実験的な作品。30の短い物語からなる。が、決してそれらは直接的なストーリーの流れを持っているわけではなく、かといってまったく関係のない短編の羅列というわけでもない。前の物語の中のさりげないキーワードがその次の、あるいはもっと後の物語の主題へと変奏されていき、最後にはメビウスの輪のようにすべてがつながっていく。一見無関係に思える各々の話が、ストーリーの奥深いところを流れるテーマや視点の面でなめらかな流れをもって展開していき、全体として見ると一つの大きな抽象的点描画のように鮮やかにテーマとストーリーが浮かび上がるという見事な構築美。『鏡のなかの鏡』は意識の迷宮である、と作者は言う。30のファンタジー調の短編と全体の織り成す構造の中で描かれるテーマ。それは我々が普段意識していないこと、あるいは意識しないようにしていること。話の展開に翻弄されているうちにいつしか見えてくる自分の心の中の意識の迷宮。そこを覗いてみたいと思いませんか。



4.  とても良い yucotさん 書き込み日: 2005年04月16日

もはや哲学書

このグロテスクでヘビーな世界観。甘さの微塵もないメルヘンが存在するなんて!凄すぎます。エンデの最高傑作といっても良いと思います。映画の「アンダーワールド」を観たときに同じような感覚を味わいました。とにかく非常にリアルな映像を想像せずにはいられないお化けのような作品です。出来れば10代のうちに読むことをお薦めします。大人のための寓話というカテゴリーのようですが、やはり想像力の豊かなうちに一度、読むことをお薦めします。私は20才の頃に初めて読みました。



5.  とても良い さん 書き込み日: 2005年05月08日

強烈なイメージ、硬質な世界、誰もいない迷宮

〜父エドガー・エンデのシュールレアリズム調の線刻画を挟んで、そこから派生したイメージを追うように途切れ途切れのエピソードがちりばめられる。それは醒めてみる夢のように、あまりに鮮やかで印象深く、とりわけ荒野、白い壁、顔のない人々、寡黙な天使のような冷たく乾いた印象が全体を支配する。「モモ」の世界を期待して手に取るとその荒野に彷徨うこと〜〜にもなりかねない。決して不快ではない、むしろ感慨深いのだがこの上なく思い読後感、呉々も十分に心して読まれることをおすすめする。〜



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